読書感想文⑤です。
寺地はるなさんの本です。無神経でガサツ、男らしさをはき違えて男尊女卑が染みついてしまっている祖父と、繊細で中世的な孫息子の同居生活のお話です。時代を行ったり来たりして昔の祖父の話を読めば、どうして祖父がそんなふうになったのかも、祖父には祖父なりの理由があるんだなと理解ができました。同情する場面もあります。祖父だけが悪いわけではないなとも思えます。それでも私は、この祖父と暮らすのは嫌だなぁと思いました。
亡くなった父を思い出します。「太っていてみっともない」「そんなんだからお前には友達がいない」言われたのは30年以上前の事ですが私は今でも覚えています。本人に悪気がないのも一緒です。傷ついたと話しても、そんな昔のことをいつまでも・・・とか家族だから、親だから他人が言えないようなことを言ってあげてるんだと父は言っていました。だから私は「家族」が好きになれません。正確には「家族」を盾にして相手の心を踏みにじる人間や搾取する人間が嫌いです。彼は子どもが生まれてくる前に植物人間になっていたけれど、子どもに会わせずにすんでホッとしたのも私の本心です。「鬼滅の刃」とか見て感動はできるし面白いんだけど共感はできないんです。もしも兄が鬼になったところに義勇さん通りかかったら普通に兄の首を差し出しますわ。「鬼滅の刃」の人間側の登場人物すべてに対して羨ましさを通り越して妬ましさを感じます。私の生涯をかけても心から大切に思える家族を持つことは出来なかったという劣等感に苛まれるのです。
この本のように父の生きてきた時間や思いをすべて知ることができたら私たちもここまで拗れずに済んだのかもしれないですね。でもそれは現実世界では絶対に不可能です。早死にの家系なので父を知る人はほとんどいません。私は彼の生い立ちに興味もありませんので誰かに話を聞くこともないと思います。しかし大人になった私はなんとなく想像することができるようになりました。嫌だった父の性格も言動もコンプレックスの裏返しだったのだろうなと思います。貧しい家に生まれ育ったこと、学歴がないこと、ブルーカラーであったことなど、強がっていたけど彼の弱味だったのでしょうね。その弱味を指摘されて自分が傷つかないために人を攻撃していたのかなと思います。全部私の勝手な想像ですが。
「本人の前で言われへんことは、陰でも言うたらあかんねん」
いとこの格好に陰で悪口?悪態?をついていた祖父に主人公が言った言葉です。私も両親に言いました。我が家は両方から「本人の前では言わないんだから」って言われましたね。わかってもらえないと無力感でいっぱいになるのも一緒です。人をコケにしたり他人の悪口で結束を深めようとする?ってなんなんでしょうね。
「鬼滅の刃」のようにまっすぐで純粋な家族愛なんてなくても、この家族は最後はうまく収まっていました。どこの家だってすれ違いや諍いや様々なモヤモヤを抱えながら頑張って「家族」を維持しているのかな。両親が亡くなった年齢に近づいていけば私だって今よりもっとわかることが増えるかもしれません。そんな希望が持てるラストでした。読んで良かったです。
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